彼の美しい切れ長の目が私を見つめている。

その瞳は月明かりに照らされ優しく揺れていて、私の全てを受け入れてくれるような気がした。

SPAT!にすっぱ抜かれた二人の記事が礼さんを苦しめる事態にならないためだ……そう、それが一番なんだ。

そのためには、あの記事を全くの虚実にしてしまうか、もしくは事実にしてしまうか。

それならば、私にとっての選択肢は一つしかない。

自分自身に必死に言い聞かせると、彼の瞳を見つめながら小さく深呼吸し震える胸を押さえた。

早く言わなくちゃ。

「……礼さん、私と!」

「結婚するか」

……。

「はい??!」

一体どういうことなのか彼の言葉の意味を理解しようとするけれど、私の思考回路では全く追い付かない。

「お前は今、俺に何を言おうとした?」

彼は少し眉をひそめると私の気持ちを見透かすように瞬きもせず見つめた。

言ってもいい?

「あの、礼さんの言ったことを言おうとしてました」

意表をつかれたのか、何か言おうとして僅かに開いた彼の口が一旦閉じられる。

そして、上唇を軽く噛むと少し困ったような表情でゆっくりと尋ねた。

「俺の言おうとしたことって?」

「結婚してくださいって……」

きゃー!

言ってから急に恥ずかしくなって両手で自分の顔を覆った。