山根さんの温かい言葉に甘えてしまいそうになる。

さっきの坂東さんと同じだ。

『甘えてもいいんじゃないのか……』

どこからか彼の声が響いたような気がした。

甘えず一人で乗り越えようとするのは、結局は周りに迷惑をかける。

一人で解決しようなんて、奢りの何物でもない。

本当にそうだ。

だけど……もし甘えるとすれば、今甘えられるのは一体誰?

私を何があっても助けてくれる人は……。

「でね、ここからが本題なんだけど」

彼女のいつもの歯切れのいい声に我に返ると、背筋を伸ばし手帳を広げた。

「N新聞社が出版しているビジネス情報雑誌【月刊MOOM】の編集長から都への取材依頼があったわ」

メモを取る手が止まる。

え?私に取材依頼?!

「錦小路社長への記事を初めてとってきた女性編集者として、その仕事ぶりを紹介させてほしいって」

「わ、私ですか?錦小路社長じゃなくて?」

「まぁ、あわよくば錦小路社長も紹介してもらえたら嬉しいですけど、って冗談っぽく言われてはいたけれどね」

取材対象になる人材なんて他にもいっぱいいるじゃない?

しかもN新聞社の月刊MOOMなんて、国内でも最も読まれているビジネス誌といっても過言じゃない。

そんな雑誌に私が??

しばらく呆然と編集長の顔を見つめる。

「都、大丈夫?」

山根さんはそんな私の様子に噴き出す。

いやいや、笑いごとじゃないって。

本来だったら両手を上げて喜ぶ状況なんだろうけれど、今はそれができない。

だって、そんな大層な雑誌に顔なんか出ちゃったら、ますますまずいことになるんだもの。

やはり【SPAT!】の問題は早く解決しなければ何も前に進まない。

背中に冷たい汗がつーっと流れ落ちた。