……さてと。

一週間後にやってくる太東出版にどう対抗するか。皆の幸せを守るためにはまず敵を知らなくちゃ。

TUTA書房に着き、坂東さんが店長と話をしている間にこっそり太東出版の【SPAT!】が置かれている棚に向かった。

確かこの雑誌で潰された有名人はたくさんいるよね。

手に取り、パラパラと読んでみる。決定的写真と周辺からの情報収集で構成された記事は、記者の文章力が秀でているのか、それなりに誰が読んでも信憑性のある内容に思えた。

あの近藤さんはどこまで私達のことを知っているんだろう?

裏をとるために礼さんの周辺にも近づいているかもしれない。

彼らの目的は一体何?

錦小路社長を貶めるスクープ記事をとりたいのか、私を取り込んで錦小路社長関連記事を掲載し、一躍出版界での地位を確立したいのか。

いずれにせよ彼の記事を出すことで売り上げは伸びるだろう。

でも、太東出版が礼さんに下手に近づき、失敗したらそれこそ出版社の存続に関わる問題になるかもしれない。礼さんもそんな迂闊な人間ではないもの。

だとしたら、まずはやはり私の出方を待ってから動き出そうとしているんじゃないだろうか。

どう出ればいい?

逃げたって、きっとどこまでも追ってくる。

ここは、発想の転換だ。何が皆にとって最善なのか。

両者に軍配が上がる方法を提示する方がより生産的じゃない?

雑誌をめくりながら、もう少しで行きつきそうな答えを必死に考える。

「都!何一人でぶつぶつ言ってるの?」

その時、店長と話し終えた坂東さんがいつの間にか私のすぐ後ろに立っていた。