21.選択肢

今か今かと首を長くして待っていた発行日。

外部に情報が洩れることもなかったのか、怪しげな人物に嗅ぎまわされることもなく無事その日を迎えることができた。

次号の編集作業を進めつつも、今すぐにでも書店に偵察に行きたい気持ちを押さえるのに必死だ。

今回は超目玉企画として、錦小路社長の名前を大きく表紙に載せてもらった。

どれだけの反響があるだろうか。

最初に手に取る人は男性?それとも女性?一体どんな人なんだろう。

自分たちの作った雑誌を最初に手に取る人なんて、今まで考えたこともなかったのに。

ずっと書店で見張っていたい衝動にかられていた。

その時一本の電話が鳴る。

隣で静かにキーボードをたたいていた由美が電話を取った。

「はい、GO!GO!出版、JOB♡JHOSHI編集部です」

パソコンの画面の見つめながら、耳をダンボにする。

「はい、ええ。あ……承知しました。編集長に代わりますので少しお待ち下さい」

明らかに動揺している由美は、受話器を耳に当てたまま編集長の方に顔を向けた。

山根さんもすぐに気づき、由美の顔を見つめ頷くと転送された電話を取る。

神妙な面持ちでその電話に対応していた山根さんはかなり長い時間電話から解放されることはなかった。

五分くらい経った頃、ようやく受話器を静かに置く山根さんの姿が目に入る。

一体誰からだったんだろう?

「長いお電話でしたね」

いちいち電話に反応することもないのだけれど、なんとなく気になって受話器を置いた山根さんに声をかけた。