彼の部屋はレストランのすぐ下の階になる。エレベーターで降り、ホテルのような洗練された廊下を進んだ一番奥の扉に彼がカードキーを差し込む。

「ん?」

何か違和感を覚えたのか、彼が首を傾げ呟いた。

「おかしいな」

「どうかしたんですか?」

「人の気配がする」

「え?人の気配って部屋の中ってことですか?」

「ああ。少しここで待っててくれ」

彼はゆっくりと玄関の扉を開け中の様子を伺いながら先に入っていった。

よく見えないけれど、奥のリビングに明かりが灯っているように見える。

まさか点けっぱなしだったなんて、彼に限ってはそんなことはあり得ない。

「おかえりなさい!」

それは突然だった。

リビングの方から女性の声が確かに響く。

「お前?!」

彼の驚く声。

知ってる女性??一体どういうこと??

心臓がバクバク震え出した。私はこの扉の向こうの光景を見て問題ないのかしら。

夢の人以上に今はその扉の向こうにいる女性の正体が知りたい。

彼に待つように言われていたけれど、怖いもの見たさで半分閉じている扉をゆっくりと押し開けた。