「意外でしたがおいしいですね」

「そうだろ?俺が言うんだから間違いない」

「間違いない、ですか?すごい自信ですね」

「俺を誰だと思ってるんだ。食品コーディネートのプロだぞ」

「あはは、そういえばそうでした」

彼の私を見つめる目はどこまでも穏やかで優しい。

出会った頃には感じたことがなかった目。

心が温かくなる目だ。

そんな時にあの夢の人の話できる??

いや、今しないといつするんだ。きっと大丈夫。これで私もモヤモヤも解消されるはずだ。

ワインの酔いも合間って、思い切って彼に夢の人のことを聞いてみた。

「夢?渡辺の家でうたたねしていた時のことか?」

「はい。私の腕を掴んで、確かに『いくな』って言われたんです」

「夢なんて、いちいち覚えてないからなぁ。誰だそれ?」

彼は首を傾げしばらく考えている様子だったが、その相手が誰だかは思い出さないらしい。

思い出さないのか、本当は思い出してるけれど言わないだけなのか。

はっきりしなかったら余計に疑心暗鬼になるじゃない?

せっかく今日はそこを確認してすっきりしたかったのに。

「また思い出したらすぐに言うよ」

彼はさして気にする様子もなくグラスに残っていたワインを飲み干す。

そして、明らかに不機嫌になっている私の顔をちらっと見るとニヤッと笑った。

「何怒ってんだ?まさか嫉妬か?」

「……嫉妬?そんな訳ありません!」

「じゃぁ、夢の奴が誰であろうが関係ないだろう?俺が今夢中なのは都だけだ」

彼は私の腰に手を回し自分に引き寄せ色気たっぷりの表情で私を見つめる。

「そろそろ部屋に戻るか?」

ドクン。

その視線を向けられたら体中に電気が走るような感覚になる。