「編集作業お疲れ様。元気にしていたか?」

彼はうつ向く私の頭をポンポンと軽く叩くと、優しく微笑む。

「はい。色々とご協力して頂きありがとうございました」

「なんだ、えらく他人行儀な言い方だな」

「他人行儀?」

ようやく顔を上げ彼の目と合わせた。

「もうお互い全てさらけ出した仲だろう?」

意地悪な顔でニヤッと笑った彼は私の腕をそっと掴むと、そのまま助手席に乗せた。

なんて恥ずかし気もなくそんなことが言えるの!?

そんな彼に何も言い返せない自分が歯がゆくて顔が熱い。

車は静かなエンジン音を響かせゆっくりと走りだす。

すぐ隣に座る彼の端整な横顔と革張りの大きなソファーに包まれるような乗り心地のよさに夢見心地だった。

久しぶりに会って話したいことは山ほどあったはずなのに、緊張して何もしゃべれない。

あの日、初めて一つになった時のことが思い出されドキドキが余計にとまらない。

「都」

「はい?」

「今日はいつもと違ってやけにかわいいワンピースを着てるんだな。とてもよく似合っている」

彼の視線が一瞬だけ私のスカートに向けられた。

ほとんどパンツスタイルの私が唯一持っているワンピース。

母が「これって時に着るワンピースくらい一枚用意しときなさい!」とあまりに口うるさく言われるものだから、昨年買ったままずっとクローゼットの中に眠っていた服だ。

薄いグレー地に淡い黄色の細かい花がプリントされた、私にしてはかなり女性らしい(全く私らしくない)ワンピースだったというのによく似合ってるなんて言われたら恥ずかしくて下唇を噛むしかできない。