思わず、キュッと体が縮こまりそうになる。

一体全体どんな人なんだろう。錦小路って社長は。

経歴もさることながら、私の想像も及ばない人物なのかもしれない。

「松下さん、貴重な情報ありがとうございました。せっかくここまで来たのでしばらく会社の前で様子を伺ってみます」

『様子を伺うって出待ちみたいな感じか?』

松下さんが電話の向こうで朗らかに笑った。

『っていうか待ち伏せするならもう一つ貴重な情報が手に入ったんだ』

「え?」

『N町にある隠れ家的なバーがあるらしくって、社長の行きつけらしいぞ。まぁ行きつけといってもどれくらいの頻度で訪れるかはわからないけどな』

「隠れ家的なバー?バーの名前はわからないんですか?」

『そこはさすがに不明なんだ』

「でも、探してみます。ありがとうございました!」

電話を切るとすぐにN町のバーを検索する。

隠れ家的なバーで探すと、三件ほどに絞れた。

バーの店長にリサーチするしかないか。簡単には口は割ってはくれないだろうけど。

その時、このビルに在籍する社員らしき女性がエントランスから颯爽と出てきた。

パンツスーツに黒のエナメルのヒールを履き、ビジネスバッグを手に持っている。

とりあえず、違ってたら違ってたでいい。

機会があればリサーチしてみるのみ。私は速足でその女性に近づき声をかけた。

「すみません。【Go!Go!出版社】の藤と申しますが、トップ・オブ・ジャパニーズフードの方でしょうか?」