結局、なんだかんだ自分に言い訳して彼のマンションまで着いてきてしまった。

社長車の運転手さんも、私の姿を見るなり「おや?」という顔をしていたっけ。

車に乗せてもらうのももう何度目かしら。

彼女でもなんでもないのに、誤解しているかもしれない。

高く夜空に伸びた高級ホテルのようなマンションの入り口を入るとコンシェルジュのいるロビーに出た。24時間常駐のコンシェルジュだろうか。その前を会釈して通り過ぎエレベーターに二人で乗る。

彼の部屋は最上階だった。

先週初めてこの場所に来た時は、あまりに突然のことで動揺も激しく、こんなにしっかりと彼のマンションの隅々まで観賞する余裕もなかった。

とにかく、彼のリビングから見える夜景が美しかったのだけは鮮明に覚えている。

今、私は彼に連れられて再びその彼の部屋の玄関をまたぐことになった。

彼は、私が記事を書くことに同意してくれるのだろうか。

私の思いは全て伝えきったけれど、ちゃんと伝わったのかはまだわからない。

彼はバーを出てからまだ一言も口を開いていなかった。

それにしても……「都の代わりは他にはいない」って、一体どういう意味なんだろう。

彼に促され、リビングのソファーに腰を下ろした時には私の心臓の速さは半端なかった。

これから起こりうることが、私の人生を大きく揺るがす事態になるような気がしてならない。だって今の私はお酒も入っている上に彼の部屋にのこのこついて着たりしてスキだらけなんだもの。

だけど、この後何が起こったとしても、少しでも長く彼のそばにいることの方が今の私にとっては大切だった。

リスクなんてもうどうでもいいくらいに少しも不安はない。