私の隣に座った彼の横顔は、まさに錦小路社長その人だった。

言葉が出ないまま、バーテンダーにバーボンを頼む彼の横顔を見つめる。

呼吸もままならないほど鼓動が更に激しくなっていく。

カウンターに置かれたバーボンを片手に持ちあげた彼は、前を向いたまま軽く息を吐くと言った。

「お前、またここで何やってんだ」

私の存在がバレていたことに驚き体が跳ねる。

彼はグラスを傾けると、私に視線だけ向けた。

「もう全て終わったはずだが?」

私はグラスをぐっと握りしめ、残っていたビールを一気に飲み干す。

「終わってません」

「秘書から君の上司に話がいってると思うが」

「はい、それは聞きました」

「それならもうお前と話すことは何もない」

「錦小路社長がなくても私にはまだお話することがあります」

一気に飲んだビールでお腹の奥が熱い。

彼は、そんな私にあきれたように一瞬表情を緩めたけれどすぐに感情の感じられない冷淡な目で私を見据えた。

「これが最後だ。言いたいことを全て言ってみろ」

私は彼の目をしっかりと見つめ返し頷いた。