「実は今朝早くに錦小路社長の秘書さんから電話があったわ」

「錦小路社長?」

思わず体が前のめりになる。

「あはは、ほんと、都ってわかりやすい性格ねぇ」

「わかりやすい?」

「いえ、いいわ。で、今回のことは全て聞いたの。貴重な経験を色々とさせもらったみたいね」

山根さんは、渡辺さんのクラフトビールや、アレッサンドロさんの日本酒のことをかいつまんで私に確認した。

「でね、社長が言うには、都はとても素晴らしい仲間思いの社員だって。自分は出れないけれど、渡辺さんとアレッサンドロさんのことは記事にしてもいいとの了解を得たから是非今回掲載してやってほしいとのことよ。もちろん、その二人の記事に関しては自分の紹介ということを明記してもらってオッケーだって」

「っていうことは、錦小路社長の仕事関係者っていうフレーズを表に出して記事にしてもいいとですか?」

「ええ、そういうこと。渡辺さんとアレッサンドロさんだけでも十分面白い内容になるだろうけれど、錦小路社長の名前をバックに出してもいいってことはそれだけでさらに十分な宣伝効果になると思うわ。秘密主義の彼がどういう仲間と仕事をしているかっていう貴重な情報になるから」

「あの、私!」

思わず椅子を引いて立ち上がる。

「ど、どうしたの?」

山根さんは目をぱちくりしながら私を見上げた。