都が欲しい。

感情が暴走するなんてことは初めての経験だったかもしれない。

俺は彼女の震える唇にキスをする。

そしてその体をしっかりと抱き寄せ、冷たい都の頬に手のひらを当てた。

俺自身の体が次第に熱を帯びていく。

そして都の鼓動が痛いくらいに速く俺の胸に打ち付けていた。

彼女の何もかもが愛おしく、例え彼女を傷つけたとしても全てを知りたい。

雨音が激しくなっていき、その音が俺のこんな浅はかな行為を最終的にうやむやにしてくれるんじゃないかなどという錯覚に陥る。

俺は一層激しく彼女の唇を求めた。

柔らかく小さな唇はどう答えていいのかもわからず、ただ俺のなすがままにされている。

それが余計に俺の男の欲望に火をつける。

俺は自然と頬に当てていた手を、首元から更にその下へ滑らせていく。

恐らく彼女にとって初めての経験だったに違いない。

いや、初めてではないかもしれないが、初めてであってほしいという男の勝手な希望的憶測だった。

ようやくこの状況を止めなければならないと悟ったらしい彼女は、俺の胸をどんどんと小さな手のひらで叩く。

そして俺も、この状況が俺の衝動によるもので本来なら押さえこまなければならないものだったことに気づかされる。

俺の理性が再び俺の中に舞い戻ってきた時、大きな目に涙をいっぱいためてこちらを悲し気に見つめている都が目の前にいた。

辛い思いはさせまいとしていた俺が、今都に辛い思いをさせていた。

こんな状況に魔が差して、初めてだったかもしれない彼女の唇を奪ってしまったんだ。

どんなに後悔しても、この事実はなかったことにできるはずもない。

俺は濡れた前髪をかき上げ、彼女から視線を外した。