14.俺としたことが……?!Ⅱ~礼side~

アレッサンドロという奴は、確かに面白い腕のある奴だが、やけに都に慣れ慣れしい。

そんなこといちいち気にしてはいけないとわかってはいるが、やはり男は嫉妬深い生き物だ。

閉じ込めようとすればするほど、俺の中にふつふつと沸くイラだった気持ちが増幅されていく。

何度か押しとどめることができたが、さすがに都にハグし頬にキスしたのを見た瞬間、衝動的に彼の肩を叩き「もう帰らなくては……」などと言っていた。

あれほど都にも用心するように伝えておいたのに一体何なんだ?

アレッサンドロに好きなようにさせて、俺に何とかしてくれというような視線だけ向けやがる。

デートにまで誘われたりして、迂闊すぎるんじゃないか。

俺を煽ってるとしか思えない。

いや、それは考えすぎか。あいつが俺を煽る理由はないんだから。

それにしても、アレッサンドロの作る酒は独特の風味を持つうまい酒だった。

日本人ではあの味は出せない。

この場所で、彼にしかできない酒だと思う。

ミラノで俺たちが料理と酒をプロデュースしている若狭シェフにすぐに連絡をとろう。

日本酒は日本から輸入するとなると味も値段も満足いくものはなかなか手に入らなかったが、彼の酒なら十分間に合うはずだ。

アレッサンドロのおいしいパスタを食べながら、次の仕事の予定を考えていた。

それにしても彼は器用な奴だ。こんなおいしいパスタまで作ってしまうんだから。

楽しそうに彼と話を弾ませている都の横顔を見つめながら、なんとも能天気な奴だと思いながらも連れてきてよかったと思う。

彼女にとってこれから記者として活躍するためにも、色んな人間と出会い、世界を知ることは必要だと感じていた。

せめて今俺と同じ時間を過ごしている間だけでも、彼女のためにできることをしたい。

例えそれがほんの一瞬だったとしても。