「大丈夫です」

「無理するな。さっきからお前の体がずっと震えている」

彼は私のすぐ隣に座ると、自分のジャケットの脱ぎ二人の体にかける。

そして、私の肩に腕を回し自分の体にぐっと引き寄せた。

「嫌かもしれないが我慢しろ。俺もこの方が熱を奪われなくすむ」

彼に引き寄せられたことで体が密着し、彼の言うようにとても暖かかった。

だけど、それ以上にこの状況に心臓が爆発しそうになってる。

彼の顔がすぐ真横にあって、しかも体も密着しているんだもの。

雨に濡れた体から彼の体系の良さが一層引き立っていた。

髪も濡れて額にはりついているのに、その横顔はやはり見とれてしまうくらいに美しくて。

「藤都」

急に名前を呼ばれて、体がビクンと跳ねる。

彼が至近距離で私の方に顔を向けた。

これ以上見つめられたら、自分の気持ちを隠し通せる自信はない。

目を逸らそうとした時だった。

彼の顔が更に近づき唇を塞がれる。


あの……あの……これは一体?

柔らかい彼の唇が優しく私の唇を覆い、そして彼の大きな手が私の頬に触れる。

心臓が大きく脈打ち、岩の上に激しく叩きつける雨音が遠くに響いていた。