どうしてそんなすぐにあきらめちゃうの?

ずっと難しい顔をして腕を組んでいる川西副編集長に助けを乞うように顔を向ける。

私と目が合った川西さんは「んん~」と唸りながら、組んでいた腕を解き顎に手をやりながら呟くように言った。

「確かにね。錦小路社長なんかに出てもらったら、そりゃ女性だけでなく全国の注目の的だよ。だがなぁ……こればっかりは他の大手を差し置いて引き受けてくれる可能性は限りなく0に近い」

一番奥の席にひっそりと座る由美もずっとうつむいたまま私と目を合わそうとすらしない。

そんなやっかいな相手なわけ?その錦小路礼って社長は?

その時、静かに山根さんが私に言った。

「そうね。私も皆の言う通り引き受けてもらえる勝算はかなり薄いと思うわ。実はまだ都にこの記事を任せる前に私も何度か挑戦したことがあったんだけど、社長の姿すら見ることも許してもらえなかったの」

「……山根編集長でも?」

私はそう言いながら、自分の椅子にゆっくりと腰を下ろした。

山根さんの持つ人間性や聡明さで、これまでかなり困難な依頼でも通してきたという功績がある。

そんな彼女ですら撃沈したってことは、到底私なんか太刀打ちできるはずもない。

次第に沈む空気に私も呑まれていき、深いため息が漏れた。

「でも、今だからこそ挑戦してみるのも一つの手だわ」

絶望の空間に突然ピリッとした山根さんの声が響く。

皆が驚いた様子で顔を上げた。

「人が変われば、流れは変わる。私じゃ無理だったけれど都だったら引き受けてもらえるかもしれない」

「それは……」

思わず山根さんの眼鏡の奥の強い目力に圧倒される。

「あきらめなければ絶対叶うわ」

編集長の手が私の肩に置かれた。

そうだ。

編集長のために、そして私の大好きな『JOB♡JHOSHI!』のために今私にできることは持ち前の当たって砕けろ精神の見せどころかもしれない。