12.山の中で……

寝ちゃだめ……と思った記憶はある。

そして、ふわふわの気持ちのいい布団に包まれて、これが至福の時というものかと感じた。

それからの記憶はない。


ゆっくり瞼を開けると、部屋の天井が見える。

そして窓際には、見慣れないジーンズとラフな白いシャツにグレーの質のいいジャケットを羽織った彼の姿があった。

わわ。一瞬で目が覚める。

今日の午前中、アルプスの麓で日本酒を作るアレッサンドロさんを訪ねる予定だった。

「お、おはようございます!」

慌てて体を起こしたら頭の奥の方がずきんと痛み、思わず頭に手を当て目をつむった。

間違いなく昨晩飲み過ぎたワインのせいだ。

しかもまたもや彼に迷惑をかけて抱き上げられたままの状態で寝てしまった。

「ようやくお目覚めか」

彼はニヤッと笑い、私の足元に腰を下ろす。

「昨日はすみません、あのまま寝てしまったみたいで……。すぐに用意します!」

そう言った途端またもやこめかみが痛み、奥歯を噛みしめた。

「二日酔いだろう?今日は無理しないで寝てろ」

「いえ、行きます」

「それならまだ時間はあるから、とりあえずシャワー浴びてこい」

「はいっ」

私は急いでベッドから降り立ち上がる。

あれ?

昨晩は確かパンツスーツを着ていたはずだったのに、今自分がホテルに備えられているネルのガウンを羽織っていることに気づく。

そっとガウンの中身を見たら、下着はちゃんと付けていたけれど……。

「悪いが、さすがにあの窮屈そうなパンツスーツで寝かせるのはどうかと思ったから着替えさせた」

「きゃー!嘘でしょう!」

一気に体が熱くなり、その体を両手で抱え込み叫んだ。