ホテルから十分ほど行った先にあるこじんまりとしたレストランには観光客だけではなく地元の人もたくさん訪れていた。

濃厚なチーズやバターが使われた料理はどれもおいしくて、ついついワインが進む。

「飲みすぎじゃないか?」

彼が心配そうな顔で私を見つめていた。

「ここは私が払いますので大丈夫です」

「いや、そんなことは構わないが、いつになく目元が赤いぞ」

「はれ?そうですか?」

私はあまり赤くならないタイプなんだけどな。

疲れがたまっている時にたまに赤くなる程度で。

ビールは何杯でもいけるけれど、ワインのアルコール度数が高いことをすっかり忘れていた。

「これ、何杯目でしょう?」

ふと心配になって空になったグラスを目の前にぶら下げる。

「何杯目というか、ボトルはもう二本空いている」

「へっ?」

呂律も回らなくなってきた。

やばい。

ふわふわしてとても気分はいいんだけど、これはやばいやつだ。

しかも今日は彼と二人きりの部屋だから、(何もないだろうけれど)一応気をしっかり持っておこうと思っていたのに。

ボトル二本って。明らかに、一人一本としても多いよね。

全身が心臓みたいにドクンドクンと脈打ってる感じ。

「もう十分飲んだだろう?そろそろホテルに戻るか」

彼はナフキンで口元を拭き、テーブルで会計を済ませた。

歩けるだろうか。まだ二十代前半の頃、ワインを飲み過ぎて足元がとられた記憶がよみがえる。