その日夜遅く、私の様子を心配した板東さんが電話をくれた。

『都、その後大丈夫?』

「坂東さん!なんだか懐かしいです」

『懐かしいって大して経ってないけど、元気にしてるの?さすがに一人で行かせたことは編集長も心配していたからさ』

「ええ、それは大丈夫ですけど、明日からイタリアに行くことになりました」

『イタリア?!確か今ベルギーに出張なんだよね?』

「急なんですけど、社長の取引先から面白い人がいるから会いにいきたいとかで……」

『やだー、なんだか楽しそうじゃない?ベルギーにイタリアって、しかもイケメンと二人で』

「いやそれは……」

『あら、前みたいに反論しないのね。前はあれほど社長のこと毛嫌いしていたのに?』

明らかにニヤニヤしているような坂東さんの声に気を引き締める。

「まぁ、それなりに仕事をされてる現場を見ているので、最初の印象よりはよくなったのは確かです。毛嫌いするほどでもないかなぁってだけで」

『あら、そうなんだ。まだ恋には発展してないってこと?』

「そんなこと、あるはずないです!っていうかあり得ません!」

『ふぅん。まぁいいわ。とにかくイタリアにも気を付けていくのよ。何か問題があればすぐ連絡すること』

「はい」

私は素直にうなずいた。

『で、取材を受けてくれそうな気配はあった?』

うう。

未だ確信は持てず。前よりは私に対して心を開いてくれているような気はしているけれど。

「まだ、はっきりしたお返事はいただいてませんが、あともう少しがんばってみます」

『そう、やはりなかなか手強いわね。でも、編集長も言ってたけれど、都はこの同行で取材以上の経験を積んでくると思うわって。帰ってきたらゆっくり話聞かせてね』

「ええ、しっかりモノにしてきます」

そうだよね。

取材がだめだったとしても、自分の成長が皆の中で生かすことができれば少しはチームのために役に立てるかもしれない。