「都、あなたが担当する記事、次誰に依頼するか決まってる?」

この春から、私は自分が最も関わりたかった経営者トップから女性達へのエール記事の担当を任されることになっていた。

正直、この記事に登場する経営者はもう出尽くした感が否めなくてまだ足踏み状態。

今までこの記事を楽しみにしてくれていた読者、また、次は誰の言葉が聞けるのかは女性だけでなくその他経営者や男性社員たちも一目を置いていたというのに、最近の売り上げの低迷の一因にはこの記事のマンネリ化の影響もあるだろう。

だから、この記事を以前のように輝かせれば売り上げアップの突破口になるかもしれないということもわかっていたけれど、すぐにそんな突破口になるような経営者を見つけて引き受けてもらうことは至難の業。その上、担当替えをしたばかりの私の実力では。

膝の上で両手をぐっと握りしめ、力なく答える。

「いえ、何人か候補はありますがまだ決まってません……」

山根編集長は私の気持ちを察しているかのように穏やかな表情で頷いた。

「そう。そういう時は一人で考えてないで全員の知恵と情報を絞りましょう。松下くん、最近注目度高い経営者誰かいないかしら?」

松下さんは、フリーランスだからうちだけでなく報道関係の仕事もしていて情報通。

そうか。

ようやくこの場所に松下さんが呼ばれた理由に納得した私は、手帳の上にボールペンを走らせる用意をして彼の方に顔を向ける。