同時に、なぜだかわからないけど、松下さんもこの会議に呼ばれたんだということは理解し、手帳を小脇に挟んでメンバー達と速足で会議室に向かった。

フロアの隅にクリアなガラスで仕切られた10名ほどが入る会議室に皆がそろうと、私は静かに扉を閉め自分の座席に腰を下ろす。

山根さんは全員の顔を確かめると、ふぅと短く息を吐き話し始めた。

「昨晩、田丸編集部長から呼び出されてね。最近の【JOB♡JHOSHI!】の売り上げについて耳の痛い話を聞かされたわ。まぁ、最近売り上げに伸び悩んでいるのは皆も周知のとおり。何とかしなくちゃならないって気持ちも同じだったとは思うんだけど、私が考えていたよりも事態が深刻なの」

手帳を開いて手を止めたまま、皆次の言葉を緊張の色濃く待つ。

「次の号……来月発刊号の売り上げが伸びなければ、上層部の方で休刊することが決まったらしいわ」

「え?」

「嘘……」

互いの顔を見合いながら、動揺の声が漏れた。

休刊は、すなわちこのチームの解散を意味している。更には、私のリスペクトしてやまない山根編集長がこの場所からいなくなるということも。

ボールペンで自分の顎を突きながらなんとか平静を取り戻しつつ尋ねる。

「ってことは、絶対今の発刊部数より落としちゃだめってことですよね」

「それはもちろん。部数を今以上伸ばしていかなきゃ無理」

皆深いため息をつき首を垂れる。

「最近、フラワー書房さんが創刊した女性ビジネス向け雑誌【ビジネスウーマン】の伸び率が凄まじくてうちは影を潜めてる。それを打ち破るのはかなり厳しい現状だわ。だけど、」

山根さんは眼鏡をくいっと上げ、二重のつぶらな瞳で全員の顔を順番に確認すると続けた。

「窮地を乗り切っていくのがこのチームよ。次号は、ドン!と目玉企画を打ち立てて編集部長を一泡吹かせましょう!」

そうこなくっちゃ!

私たちの愛するボス、山根編集長の一声に皆の目が爛々と輝き始めた。