それから三年生、四年生と、“私の隣の席になると怪我をする”……と変な噂が広まって。
ただの一度も、隣の席の男子は口をきいてくれなかった。
「琴莉のせいなんかじゃない……!」
気味悪がられる日々の中で咲希ちゃんは必死に訴えてくれていて、それだけが唯一の救いだったと思う。
五年生になるとそんな噂は忘れ去られていたから、今度こそは笑顔で話そうと勇気を振り絞った。
だけど、傷口はさらに深くなった。
五年生になって隣の席になった男子は、学年で一番怖がられている喧嘩の強い後藤(ごとう)くん。
態度も身長も声の大きさも全てがデカい上に、柔道も習っている。
「……よろしくね。後藤くん」
怖かったけど、思い切って声をかけた新学期。
「は?お前の声小さすぎっ。聞こえねーよ」
「っ、」
鬱陶しそうな顔つきで放たれた言葉にビックリして、それ以上は何も言えなかった。