* * *
───小学生の頃。
一年生の時は緊張と不安で、明るく快活な性格の咲希ちゃんとは反対に、なかなか隣の席の男子と話せなかった。
いつまでもたっても、「うん」と返事をするか相槌を打つだけの私に、
「なんだ、つまんない奴だなぁ」
……と、いよいよその子が嫌気をさしてしまった。
「琴莉のペースでいいんだからね!」
男子となかなか打ち解けられなかった私を、いつも咲希ちゃんは心配してくれていたのだ。
「笑顔で話しかけるといーんだよ?だから、琴莉も笑顔だよ!」
二年生になって、咲希ちゃんに言われた通り笑顔で声をかけてみようと思ったある日。
算数の時間、先生がプリントを取りに職員室へ離れた時だった。
「おっと!あっぶねーっ!」
「ギリギリセーフだったじゃん」
隣の席の男子が度胸試しだとかいってふざけていた。
相手は前の席の男子だ。
彼は身体を後ろに向けて、えんぴつを持っている。