言いながら曖昧に笑ってみせると、ほんの一瞬、葉月くんが眉根を寄せた。
今のは、本当に葉月くんを困らせるのは嫌だから伝えただけで。
「じゃあ言ってもいい?」
「っ、え……。も、もちろん、いいよ」
そう返事をしたくせに、途端に緊張が走ったように身体に力が入る。
「今みたいに無理に笑うなよ」
「っ、」
眉根を寄せた葉月くんから目を逸らせなくなる。
「それから、後藤って言ったっけ?」
「う、うん……」
葉月くんが真剣味を帯びた声で問いかけてくる。
どうして葉月くんが、後藤くんのことを?
「そいつの言ったこと間違ってるよ」
「……間違ってる?」
それなら咲希ちゃんも中学生の頃に同じようなことを言って激怒していた。
人の気持ちがわからないのかって。
だけど今目の前に居る葉月くんは、さっきと違って、とても柔らかい表情で私へ視線を送っている。
「気持ち悪いじゃなくて、可愛いの間違えでしょ?」
「え?」