小学校卒業まで、結局隣の席の男子からは距離を置かれたまま。


中学生になってすぐの頃は、何度か気持ちを切り替えようとしたものの、他の小学校から来た男子が隣の席だったこともあり、どうしても勇気が持てなかった。


時間が過ぎるのはとても一瞬で。


隣の席の男子とようやく自然に挨拶が交わせるようになった頃には、もう受験ムード一色の季節に差し掛かっていた。



「ったく、後藤の奴!未だにわたしの許せない人間ランキングでブチ切り一位だわ。気持ち悪いなんて言われたら、誰だって傷つくってわかるでしょ、普通」


「ん……」


「でも、よかったんじゃない?」


「よかった……?」



なかなか変化のない私を心配した咲希ちゃんは、その時、背中を押してくれた。



「そんな心の歪んだ持ち主と、友達になんかなるんじゃない!って神様が教えてくれたのかもね?」



咲希ちゃんは私を一心に見つめて、そっと手を握る。


その手の温かさに、涙が零れ落ちた。


あの日、刃のように振り下ろされた言葉。


それにいつまでも押し潰されそうな私の心に寄り添ってくれたのは、咲希ちゃんだけだった。



「琴莉が笑った顔、わたしすごい好きなんだ」



同情でも慰めでもなく、私の笑顔が好きだと言って、咲希ちゃんが笑ってくれた。