「後藤くん、宿題やってきた?結構難しい問題もあって───」


「お前」



私の声に被せるように後藤くんが口を開いた。


とても冷たい瞳が刺すように私を見据える。



「───気持ち悪いんだよ」


「え?」



本当に、それは少しも予想もしていなくて、あまりにも突然の出来事で。



「いっつもヘラヘラ笑って声かけてくるけど、気持ち悪いって言ってんだよ」



後藤くんはいつもの様に大きな声を出すこともなく、一定の声音でじっとりと私を見つめたまま。


それはまるで、本当に気持ち悪いモノでも見たかのように。



「お前の隣の席になると怪我すんだろ?不気味なんだよ。呪われそうだから、もう俺のこと見んな」


「……っ、」



頭から冷水をかけられたみたいに、たちまち全身が冷たくなった。


後藤くんの中で、噂は消えてなどいなかったんだ。



上手く息が吸えなかった。

苦しくて、痛くて、声が出なかった。



“ 気 持 ち 悪 い ”



その言葉がずっと頭の中から離れなかった。