翌日、私と中里さんはルームメイク(客室清掃準備)のヘルプに来ていた。先日、支配人と清掃したので粗方の事は知っていたが、細かい部分の指導を受けながら作業をしている。

「プランによっては、女性のアメニティが特別な時もあるから気をつけてね。特にアニバーサリープランと当日がお誕生日の方には入浴剤が付与されるから、チェックリストを見逃さないで」

「はいっ」
「了解しました」

ルームメイクの方々は業者委託しているが、統率者のルームキーパーの三枝(さえぐさ)さんはホテルの社員で事細かに指導をしてくれる。

私達は元気よく返事をして、黙々と作業をこなし、終了後にはルームキーパーの太鼓判を貰えた。

「支配人には二人は完璧だと伝えておくわね。しかし…二人の何が駄目なの?こんなに一生懸命に仕事をしているのに…。他の部署は貴方達二人に仕事を教えないなんて、どうなっているのかしら?」

三枝さんは物腰柔らかな女性で、私達に対して物凄く優しく接する。

支配人や私達が言った訳ではないのだが、社員達が仕事を教えてくれないので支配人の所有化にいるとの噂が広がり、三枝さんが心配して親身になって話を聞いてくれた。

「貴方達なら大丈夫よ」って笑いかけてくれる姿は女神様のようだった。

ルームメイクの作業が終了すると、女神様のような三枝さんの元を離れて遅めのお昼に向かう。

「恵里奈ちゃん、イメチェンしたんだね。元々可愛い子だなって思ってたけど、イメチェンしたら綺麗になったね」

「…ふふっ、ありがと」

支配人のお姉さん、美容室の店長に教わったメイクを何とか頑張って再現してきた。今まではメイクの仕方が間違っていたらしく、支配人の指摘通りに幼稚に見えていたようだった。