嬉しいのに涙が止まらず、困り果てた一颯さんは私の額にキスを落とす。そして、子供みたいにティッシュで鼻元を拭かれた。私のせいでロマンティックな雰囲気は台無しだったが、涙が止まって来て、一颯さんに抱き着いた。

「だって、嬉しくて…。大好き、一颯さん!こんな私で良かったら、一生一緒に居て下さいね」

「俺は他の誰かじゃなく、お前じゃなきゃ嫌なんだ。ずっと傍に居て、俺を支えて下さい」

一颯さんと目と目が合い、引き寄せられたかのようにキスを交わす。

「……ん、」

深みを増していくキスに歯止めをかけられ、一颯さんにお姫様抱っこされて連れて行かれたのはバスルーム。扉を開けるとふんわりとアロマの入浴剤の良い香りと薔薇の香りが漂っていた。バトラーとして要望があれば薔薇風呂を用意するのだが、今日は用意された側だった。色とりどりの薔薇が湯船に浮かんでいて、非常に綺麗。薔薇風呂を用意している時も花の効力で癒されるが、入る立場としては段違いだ。

「ゆっくり入っておいで」

いつもはお風呂に一緒に入りたがる一颯さんが、何故だか遠慮している。

「……一緒に入らないんですか?」

「薔薇風呂は抵抗がある…」

「先に入ってますから、後から来て下さいね」

「いつもは一緒に入るのは嫌がるくせに…」

「今日は特別です。せっかくの薔薇風呂なので、一人で入ってもつまらないです!」