「恵里奈、コレも受け取ってくれる?」

私が紅茶を飲んでいると一颯さんがジャケットのポケットから何かを取り出した。

「一生かけて幸せにします。結婚して頂けますか?」

紺色の四角の箱だった。返事をする前にポロリ、と涙が零れ落ちた。感極まってしまい、返事が出来ない。

「現在は同じサービススタッフとして仕事内容も理解していて、生活リズムもさほど変わらない。けれども結婚してからは互いの仕事が変わるかもしれないし、恵里奈が専業主婦になる日が来るかもしれない。今後の予測は出来ず、それによって不憫な思いもするかもしれないが……

何があっても全力で恵里奈を守るから、これから先の人生を共に歩んで下さい」

「はい…」

ポロポロと涙を流している私の左手を取って、薬指に指輪をはめてくれた。

婚約指輪は、センターにダイヤモンド、その両脇にピンクダイヤモンド、プラチナのリングの部分はひねりが加えてあり全体的に調和が取れているデザインの物。先日、一緒に見ていたブライダル情報雑誌に掲載されていて、私が「可愛い」と声を漏らしてしまったデザインと同じだった。私には勿体ない位の素敵なデザインの婚約指輪だ。

「ダイヤモンドは4月の誕生石で永遠の絆と言う意味合いもあるらしい。その隣はピンクダイヤモンド」

「……っふぇ、す、ごく、きれ…いれす…。それにコレ、こないだ一緒に…見て、た指、わ…」

「いい加減、泣き止め」