一颯さんの子供の頃の話を聞きながら食事をしていたら、次第に緊張も解けて来た。その後はカトラリーを落とすことなく、料理を堪能出来た。

初めて食べた高級フレンチは自分には大人の味だった気がする。鹿肉も初めて食べた。シャンパンも甘口で口当たりも良かった。一颯さんとフランス料理も様になっていて、食べながら眺めてしまった。何をしても、スマートで格好良いなんて反則だ。

「一颯さん、御馳走様でした。緊張し過ぎましたけど、美味しかったです」

「自分でもサービスしてるだけあって、作法は分かってたから緊張が解けたらなんて事なかっただろ?」

「うーん、そうですかね…。敷居が高いのは変わりませんけどね…。一颯さんに見とれてたら、緊張もいつの間にかなくなってましたよ」

「……あ、そう」

「今、照れましたね?」

「……ばぁーか」

客室に戻るエレベーターの中での会話。一颯さんをからかうと顔が赤くなる時があるから、可愛い。

食事を済ませて部屋に戻ると、誕生日のデザートプレートが届いた。