行先も分からないミステリーツアーみたいに車を走らせていたが、見覚えのある通りに出て来た。咲希さんの美容院に着き、手際良く髪をセットして貰った。大人っぽいアップだが可愛らしさもある。

「お誕生日おめでとう!恵里奈ちゃん。コレは私からのプレゼントね」

メイクもしてくれた上にイヤリングもプレゼントされた。パールの着いた長めなイヤリング。

「メイクも素敵なイヤリングも有難う御座います!嬉しいです」

「恵里奈ちゃんって本当に可愛いわぁ。一颯には勿体ない!」

椅子から立ち上がった私を抱きしめる咲希さん。

「口の減らない奴だな、まったく。行こう、恵里奈」

「相変わらず、かっわいくないわね。どの口が言ってんの!」

私の手を引いて美容院を出ようとした一颯さんの頬を咲希さんはつねった。一颯さんがつねられるなんて初めて見たから、心外かもしれないが私には面白くて思わず笑みがこぼれた。

「あはは、仲が良いですね」

「どこが!」
「そんな訳ないでしょ!」

子供の頃から、こんな感じの二人なのかな?大人になってもじゃれ合えるのは仲が良い証拠だと思う。

私達は咲希さんに別れを告げ、再び車で移動する。路地裏の駐車場に車を停めて、「着いてきて」と言われて降ろされた。少しだけ歩くとショーウィンドウに上品なワンピースなどが飾られているショップに着いた。

「いらっしゃいませ」

一颯さんが扉を開けてくれて、言われるがままに恐る恐るショップの中に入る。
見渡す限り、披露宴にお呼ばれした時に着るようなワンピースやカクテルドレスが沢山あった。

「一颯、久しぶり!咲希から聞いてるよ。どうぞ、こちらへ」

店員さんは一颯さんと気軽に話していて、名前を呼び捨てしてるので知り合いみたいだ。戸惑っている暇もなく、上半身からつま先までのコーディネートをされ、着替えをさせられた。一体、どういう事?

「はい、こんな感じで良い?」

袖がレース仕様になっている紺のワンピースにシルバーのクラッチバッグ、交差している紐が可愛い紺のヒール。