副支配人にマンションで出会ってから、数日後の出来事。一颯さんと副支配人が一緒に行動しているのを見かけた。ホテル内のツートップだから、一緒に行動してもおかしくはないけれど、よっぽどではない限りは二人きりと言う事はない。その二人の姿は実に楽しそうに見えた。

あれから一颯さんちにはお邪魔してないし、ゆっくり話す時間もなかったので事情は分からない。

それから一週間位が過ぎ、従業員食堂で吉沢さんと一緒に夕飯を取っている時、他の部署の女子社員が噂話をしていた。フロントに居た時に一緒だった方も混ざっている。

「支配人と副支配人って付き合ってるんだって!」
「住んでるマンションも一緒なんだよね?」
「そうみたい、お互いに行き来してるのかな?支配人も副支配人も仕事は厳しいけど、美男美女だしお似合いっちゃお似合いだよね!」
「分かる~!でもさ、篠宮さんにヤケに肩入れしてたから、そっちの噂もあったみたいだけど、相変わらずの冷たい態度だからないよね~」
「そうだよ、ある訳ないじゃん!あはははっ。だいたい支配人と駄目社員じゃ釣り合わないって!」

全て聞こえてますけれども!私の事、今だに全力で嫌いなんだな。近くに居るの分かってて、わざと話している。私はナポリタンフォークでクルクルし過ぎて、口に入らない大きさになっていた。そんな私を見て、吉沢さんはニコニコしていた。

「楽しそうだね、私も混ぜてくれる?」

吉沢さんはいきなり席を立ち、彼女達の前に仁王立ちした。