「……でもね、必死で良いホテルを作ろうとしてるのは分かる。だから、私も支配人と同じ様にしようと思ってるの。それにあの人が居なくなる時が来たら、次は私が支配人になるチャンスが訪れるかもしれないじゃない?だからこそ、今は各部署との連携も密にしなきゃいけないと思うの。あの人に出来て、女だからって言う理由で私に出来ないなんて事はないの!年下の男になんて負けてらんない!」

負けん気が強いけれど、一颯さんの事は認めてくれている。

「だけど、たまにいけ好かない時があるのよね、あの人。何でも出来ますアピール半端なくて、その通りに何でもそつなくこなしてるし。……容姿端麗でも、一部からは鬼軍曹とかってアダ名だから、お付き合いしてる噂とかは聞かないわね」

「………そうですね」

副支配人は本当に気付いてないのだろうか?私の連休も一颯さんの連休も把握しているのに?オフシーズンだから連休が重なったと思っているだけ?

「仮にお付き合いしている方が居たとして、どんな人だと思う?」

「……さぁ、どんな人なんでしょうね?」

歩いている私の顔を覗き込み、確認してくる副支配人。私は苦笑いを浮かべて笑って、「もうすぐ寮のアパートに着きますので…」と言い残し、そそくさとその場を離れた。

やっぱり、勘づかれていると思った。勘づいていて、わざと仕掛けられた様な気がする。私も副支配人の秘密を握っている訳だし、お互い様なんだから大丈夫だよね?

案の定、その日は何事もなく、副支配人とすれ違っても、会話をしても一颯さんとの関係に触れられなかった。