「難しい事は分からないのですが、経営管理とかでしょうか…」

少しだけ考えてから言葉に出した。支配人の仕事内容はホテルのサービススタッフの育成、事業計画を立てた上での経営管理、ホテル全体のマネジメントなど様々な仕事があると一颯さんから聞いている。この全部を言ってしまったり、ホテルと言うワードを出してしまったら、副支配人にバレてしまうから言えなかった。

「経営管理までされてるのね。お付き合いしてる方って、今流行りのハイスペックな方なのね。篠宮さん、やるじゃない!」

副支配人に背中をバシバシと叩かれた。普段はイライラしていて性格キツめの美人な印象の副支配人だが、話をしてみたら案外そうでもなかった。ニコッと笑うと年上なのに可愛らしい印象が持てた。

カツカツとハイヒールの音を鳴らし、アスファルトの上を颯爽と歩く副支配人は出来る女そのものでカッコイイ。一颯さんの女版みたいだ。

「それはそうと…篠宮さん、連休は満喫出来たかしら?実家にでも行って来たの?それとも彼氏と旅行?」

「えっと……、旅行です。休みが一緒になったので…」

勘ぐられているのか、何なのか、答えずらい質問ばかりを投げかけられる。思わず返答が棒読みみたいになってしまった。

「良いわね、彼氏と旅行とか。私なんて、あの人が連休したせいで、アレコレ大変だったのよ!そーゆー時に限って、トラブルが起きたりするし!悔しいから自己解決して事後報告しかしてやらないけどね!」

「………そうでしたか、大変でしたね」

「そうなの!支配人代理って疲れるの!だって、あの人は自分で自分の首絞めてるんじゃないかって位、余計な仕事にも首突っ込んでるの!各部署、自分達だけで解決させれば良いのに、いちいち一日一回は見回りとかするし、それを引継ぎしたら、余計な仕事も回って来るし、身体がいくつあっても持たないわ!」

副支配人のマシンガントーク、面と向かって初めて聞いた。