「……恵里奈、眠れないの?」

「はい、今日は中々寝付けません」

「仕方ないな、おいで」

私が目尻に溜まった涙を堪えていると、少し震えていた私に勘づいたのか一颯さんがうっすらと目を覚ました。いつものように腕枕をしてもらい、向かい合わせになって眠りにつく。

依存は怖い。心地よくて離したくない温もりだけれど、いつの日か手放す日が来たら私はどうなるのだろうか?

───翌朝、目が覚めると隣にはぐっすりと深い眠りについている一颯さんが居た。「仕事に行って来ますね、一颯さん」と心の中で唱えてから、額にキスを落とした。一颯さんって横向きのままで寝るのが好きだよね。抱き合って寝なくても、いつも横向き。

愛おしい寝顔を見ながら、ベッドからそぉっとフローリングへと足を伸ばした。ひんやりとした感覚がつま先にまとわりつく。一颯さんを起こさないように静かに支度をして、部屋を出た。

エレベーターに乗り、途中の階で人が乗る為に止まった。エレベーターには私一人だったが、そこに男女が話をしながら乗って来た。一人は茶髪の男性、もう一人は……。

「し、篠宮さん……!?」

「ふ、副支配人!」

パンツスタイルのスーツを着こなし、高めのヒールを履いていたのは、副支配人だった。一緒に乗って来た茶髪の男性は知らない人。こんな所で会うなんて思っても居なかった。このマンションに住んでいるのかな?一颯さんのマンションに通うようになってから初めて会った。