私を見つめる時の艶のある表情とは裏腹に、Sモードに入った時は仕事での鬼軍曹みたいなキリッとした表情になるから全身にゾクゾクとした感覚が走る。私はMっ気はないはずなのにな、ベッドの中で意地悪される度に身体の熱は高ぶってしまう。

「今日は逆バージョンで、恵里奈にくっついて寝よう。おやすみ…」

「っわぁ、おやすみなさい」

「……恵里奈の心臓の音、良く聞こえるよ」

いつもなら私の事を両腕で抱きしめたまま寝たり、腕枕をしてくれるのに今日は違った。一颯さんは私の胸辺りに顔を埋めて、抱きついて来たので、私はそっと抱きしめた。

このギャップは反則だ。さっきまでのSっ気はどこに消えたのか、一颯さんが可愛い過ぎる!甘えたさんの一颯さんに悶絶してしまう。

「おやすみなさい」ともう一度呟き、一颯さんの額にキスを落とした。疲れている時は直ぐに寝てしまう一颯さんがたまらなく愛おしい。

時間を気にせずにずっと一緒に居られたら良いのにな。ホテル業の何がネックかと言うと出勤時間と退勤時間が変則なのと拘束時間が長い事だ。早番として朝早く出勤しても、中抜けとして2時間~3時間位の休憩を挟み、また出勤したりするのも疲れが取れない原因。一颯さんに関しては支配人だから、中抜けもなく朝から晩まで通し業務が多い。

一颯さんの休みの前日以外は来ないって自分で決めたくせに、考えたら寂しくなってきた。自分の中で一颯さんの存在が大きくなり過ぎていて、プライベートで少し会えないだけでも胸が苦しくなる。