幸田様のした事は 許される事ではないが、本人は孤独を人一番味わっているように見えた。就職先が決まったら、彼にも幸せが待っていると願いたい。

「幸田様にも幸せになって欲しいですよね」

「相変わらずのお人好しだね、恵里奈は…」

一颯さんは笑いながら、私の頭をクシャッと撫でた。手を繋いで散歩をして、海の写真をスマホで撮影したりしてから、車に乗り込んだ。

「旅行に連れてきてくれて有難う御座いました。素敵な思い出になりました」

シートベルトを締めながら一颯さんに伝えると…「次回は新婚旅行かな~?」なんて言ってクスッと笑っていた。私にはその言葉が嬉し過ぎて胸がいっぱいになり、返す言葉に詰まった。

一颯さんの支配人という立場上、いつ職場恋愛を公表して結婚出来るのかは分からないけれど、繋がっている赤い糸を切り離したくはない。

「……恵里奈が良ければ、いつでも御両親にも挨拶に行くし、結婚の準備も進めたいと思ってるから。恵里奈の事…本気、だからね?」

一颯さんが車のエンジンをかけるとお互いが好きなバンドの曲が流れてくる。ちょうど良いタイミングでウェディングソングとしても使われている曲だった。

「………はい、本気なのは知ってます」

「っぷ…、随分な自信だね、恵里奈ちゃん」

真面目に答えたつもりだったのに、一颯さんは吹き出した。

「…だって、こんなに大切にしてもらってるんだから自惚れても良いでしょ?……それに……」

「それに?」

「一颯さんが挨拶しに来てくれるって言ってるのに断る理由なんてありません!」

「ははっ、このまま行っちゃおうか?」

「それは無理ー。心の準備ができてないから……!」

家族には、お付き合いしている人が居るとは知らせてある。挨拶に行ったら、皆、ビックリするだろうな。私が連れてきた人が容姿端麗で働いているホテルの支配人だなんて───……