「一颯さん、私の為に本当にすみません。無理させてしまって…」

「そーゆーつもりで言ったんじゃない。恵里奈と過ごす時間を確保する為なら、努力を惜しまないって事!仕事よりも副支配人にガミガミ言われる方が大変だったりする……」

「……副支配人、いつもピリピリしてますもんね…」

「今回の連休も恵里奈と一緒だとバレたら、根掘り葉掘り聞いてきそうだよ。まぁ、関係はバレてないけど……バレたら間違えなく左遷されそう」

副支配人は33歳、独身。世間では珍しく女性の副支配人で、仕事一筋で生きてきた為に恋人は居ないとの噂。そんな方なので恋沙汰で連休を取ったと知られたら、咎められるに決まっている。ましてや、支配人と部下が恋愛関係にあるとなれば尚更……。一颯さんはいつも強気なのに、副支配人の前では弱気になってしまうらしい。確かに副支配人って……。

「副支配人って文句言う時もマシンガンだから誰も止められなくて、だけど…不思議と高見沢だけには優しいんだよな」

「そうなんですか?タイプなのかな?」

「副支配人って案外、アイドル好きなんじゃないの?高見沢はアイドル系だろ?」

「確かにそうですね、高見沢さんは口は悪いですが顔はカッコ可愛いですから」

「……恵里奈にカッコ可愛いと褒められてる高見沢が憎い」

「なんですか、それ……」

軽快に話していた一颯さんの御機嫌が少し悪くなり、私の後頭部に手を伸ばした。ジンを口に含み、私にキスをして流し込んだ。喉に流れ込んだ灼ける液体。日本酒の時よりも、喉が熱い。