「ジンのロックとコイツには甘めのオススメのカクテルを」

「かしこまりました」

視線を感じつつ、手を繋ぎながら歩いて旅館のバーに立ち寄った。浴衣姿のままでバーに入れるなんて、何だか新鮮な感じ。

「乾杯!いつも、遅くまでお疲れ様」

「一颯さんもお疲れ様です」

女性のバーテンダーがドリンクを運んで来てくれた。カウンターは空いてなく、私達はバーの角席に座った。黒を基調としたバーに暖かみのあるライトがマッチしていて、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

「カクテル美味しい?」

「はい、色も綺麗だし飲みやすいです」

海沿いにある旅館なので、それにちなんだブルー系のオリジナルカクテルらしい。色合いが凄く綺麗。一番上がブルー、真ん中がオレンジ、一番下がイエロー。海に映った朝日をイメージしているとの事。凄く甘い訳ではなく、甘酸っぱいと言った方が良いかな?一颯さんに勧めたら「甘い」と言って返された。

「高見沢に連休貰えて良かったな」

「はい、一颯さんも連休取る為に無理させてごめんなさい」

「恵里奈の為なら頑張れるよ。労働法により、13連勤までは大丈夫なんだって」

副支配人との休みの兼ね合いや会議等々、色々あっての13連勤だったらしく、やっと休みな一颯さん。そんな一颯さんを振り回して申し訳なく思う。