「しかも一緒に食べよって言ったのに、お酒飲まされただけだし…」

「はいはい、分かった。はい、口開けて…」

一颯さんは箸で伊勢海老のお刺身を一切れつまみ、少しだけ醤油をつけてから私の口に入れた。行動に驚き、なかなか口を開けなかった私の口元に近付けて無理矢理に入れた感じ。

「次は何が良い?」

「じ、自分で食べれます。一颯さんにも食べさせてあげますか?」

「うん、食べる…」

手を伸ばして同じく伊勢海老のお刺身を一切れ箸で持ち上げると、箸を持つ手を掴まれて自分の口に運んだ。

「…んまい」

私には平気で食べさせたくせに、自分は照れくさいのかそそ草に口に運んでいた。そんな素振りを見せている一颯さんが可愛らしい。

その後に一颯さんの傍を離れないからと約束し、お姫様抱っこから前向きに座らせて貰った。今日はいつも以上にスキンシップをしている。

食事を済ませた後は旅館内を探検し、浴衣で入れるバーに行く事にした。誰にも気にする事はなく、手を繋いで堂々と旅館内を歩ける事に喜びを感じる。通りすがりの女性や女性従業員の目を一颯さんは惹いているのか、目線を感じた。隣に居るのが私でごめんなさい……。やっぱりつり合わないかな?