───一颯さんと一緒の休みで濃密な時間を過ごした翌々日、吉沢さんが仕事に復帰したらしい。

「篠宮ちゃん、こないだはありがとね!全回復したよんっ!コレはお礼です」

出勤して直ぐにエグゼクティブフロア専用の従業員の女子ロッカー室に向かった。私の姿を見つけると出勤を待ちかねていた様に吉沢さんが、私の目の前に有名パティスリーの紙袋を差し出して来た。熱を出してから3日ぶりに会う吉沢さん。

「もう大丈夫なんですか?」

「点滴に連れて行って貰ってから、熱も下がり始めてすっかり良くなったよ。篠宮ちゃん、受け取ってくれないと困る~」

差し出された袋を受け取らずにいると無理やりに右手に掴まされた。吉沢さんは扁桃腺が腫れやすい体質らしく、酷い時は抗生剤の点滴を打たないと熱が下がらないらしい。

「元気そうで安心しました!お菓子も頂いてしまい、何だか申し訳ないです…。有難うございます!」

「こちらこそ有難う!拓斗と一緒に買いに行ったの。ここの焼き菓子がめちゃ旨だから食べてね」

「………たくと?」

「拓斗って高根沢だよ」

「はい、そうですよね…」

ロッカー室は吉沢さんと二人きりだから、周りに気を遣わなくても平気だけれども吉沢さんが高見沢さんを拓斗って呼んでいる。今までは名字で呼んでいたのに、どういう風の吹き回しだろうか?

「私ね、本当はずっと前から拓斗の気持ちに気付いてたんだ。でもね、彼氏とも別れられなくて応えようとしなかった。私は本当に最低な女だから、彼氏の話をする事で諦めて欲しかったのに…拓斗はそれでも気持ちを伝えてきたの」

吉沢さんの胸の内を初めて聞いた。