「高見沢?今日は元気がなさそうだったな。最近、アイツは上の空だったりして、仕事に身が入ってない気がする…」

「私のせいなんです!私が吉沢さんの話をしなければ、高見沢さんも傷付けなくてすんだのに。高見沢さんから何か聞いていませんか?一颯さんなら何か知ってるんじゃないかと思って。それに…私と一颯さんの関係にもショックを受けてるみたいです…」

「あぁ、高見沢と吉沢か……。高見沢からは何も聞いてないが、二人は大学の先輩後輩だとは言っていたな。……高見沢は吉沢が好きなんだろ?見てれば分かる。知らない人は居ないんじゃないか?って位に分かりやすい」

一颯さんは立ち上がり、私の頭を優しく撫でると「あんまり悩むな。後は当人同士の問題だから」と言ったが、私は気が重かった。

「……それから、誰が何と言おうがお前を選んだのは俺なんだから、手放す気もない。お前は違うのか?」

「………私も手離したくない、です」

一颯さんの手の温もりが頬に降りて、撫でられた。優しい目で私を見て、微笑んだ。一颯さんに見つめられると目を反らせない。

「なら、良かった。仕事に戻りなさい。戻りたくないなら、居ても良いけど…今は構ってはあげられないよ?」

「も、戻ります!邪魔してごめんなさい!」

「………仕事が終わったら、沢山構ってあげるから」

クスクスと笑う一颯さんは「仕事が終わったら連絡して」と言って、もう一度、私の頭を撫でた。名残惜しいが、支配人室を後にして、仕事に戻る。