「吉沢さんって小さくて、見かけはお人形さんみたいに目がパッチリしてて可愛いですよね~。彼氏の話とかした事ないですけど、いるのかな~?」

私は高見沢さんの反応が見たくて、つい意地悪を言ってしまう。

「………いるよ。リーマンの彼氏。一緒に居たのを見た事があるし、話も聞いてる」

「そうですか…」

私は聞いちゃいけない事を聞き、踏み込んではいけない場所に踏み込んでしまった。高見沢さんは何時になく、切なそうな顔をして答えた。

高見沢さんが絶対に吉沢さんを好きなのは知っているけれど、どうしてあげる事も出来ない。私は聞いた事がなかったけれど、彼氏が居たんだ。高見沢さんはどんな気持ちで好きな人の彼氏の話を聞いていたのだろう?考えれば考える程に悲しくなる。

「……あの女さ、彼氏に随分と泣かされてるのに、それでも離れようとしないんだ。女って何なんだろうな?」

「そんな時こそ、マフラーみたいに略奪しちゃえば良いじゃないですか!」

「……あんたさぁ、時々、とんでもない事言うよね」

呆れたように溜め息をつく高見沢さんに反論する。

「だって、今のままじゃ高見沢さんも吉沢さんも救われないです。略奪ってイケナイコトですが、吉沢さんが泣いてるなら、高見沢さんが幸せにしてあげたら良いと思います」

「そんな事したら、アイツはもっと泣くよ。正直言うと…前々からの知り合いで、大学の先輩後輩だから。彼氏はアイツと同い年」

私は何にも言えなくなった。高見沢さんと吉沢さんは大学の先輩後輩で、彼氏も知り合いで…。高見沢さんは何年間、片思いして来たのだろう?高見沢さんって案外、一途なんだなぁ。吉沢さんは高見沢さんの気持ちを知らずに彼氏の話をしているとしたら、知らない事がこんなにも残酷だなんて。

「早く結婚でもしちゃえって思ってるんだけど、彼氏が煮え切らない。あんな浮気性の彼氏、別れたらいい、よ…。いてっ!」

バシンッ!

いきなり、後ろから何かが高見沢さんの背中に当たったらしい。

「……バカッ!」