中学受験をして地元から離れた私立に通い始めてからは、全く彼に会わなくなった。

小学校を卒業したあと彼を見たのは、うちに遊びに来た従姉妹を地元のお祭りに連れて行った中一のとき。

男女混ざった複数人のグループの中にいた彼は少し見ない間にグンと背が伸びていて、ちょっとだけ大人っぽくなった横顔にときめいた。

見たのはほんの一瞬で、従姉妹と出店の列に並んでいる間に彼の姿はお祭りの人混みの中に消えてしまった。

そのあとは地元の駅やコンビニに行くたびに、お祭りの日のような偶然を期待してみたけれど、それ以来彼を見かけることはなく、少しずつ彼を思い出す機会も減っていった。


それがまさか、こんな偶然が起きるなんて……


「友ちゃん?何してるの?」

不意にお母さんに呼ばれてハッとする。

校庭の彼の姿に釘付けになっていた私は、お母さんのことも自分が今どうしてここにいるのかもすっかり忘れてしまっていた。