「あー、今日も疲れた」
「今日は特に足首痛いわ」
なかなか動き出そうとしない村田さんの背中を見つめていると、野宮さんと持田さんが教室から出てきた。
ふたりとも、私たちがまだ廊下にいることに気付いているはずなのに、遠慮なく大きな声で話している。
「あいつ、やっぱり運動神経鈍いわ。いつも私よりワンテンポ遅れるんだけど」
「はは。思いっきり尻餅ついたのには、ほんとウケた」
「あー、あれはね。ていうか、トンカと深谷がペアになったら良くない?」
「確かに。体育祭委員が身長差がとかわけわかんないこと言うからだよね。うちらふたりでペアになったほうが絶対に息が合うのに」
笑いながら遠ざかっていく彼女たちの声は、確実に村田さんにも聞こえているだろう。
二人三脚のペア分けをしたのは、クラスの体育祭委員だった。
最初に私と村田さん、野宮さんと持田さんのペアに分かれて練習していたら、その様子を見に来た彼が強引に私たちのペアを変えた。
彼曰く、身長が同じくらい同士でペアになったほうが足並みを揃えて走りやすいらしい。
背の高さで言うと、私と持田さんはやや小柄で、村田さんと野宮さんは背が高い。
体育祭委員の彼は、今年のクラスを何としても優勝か準優勝に導きたいらしかった。