「村田さん、走るタイミング合わせてよ。遅い」

「あ、ごめんね」

苛立ちを声に出す野宮さんに向かって、村田さんが申し訳なさそうに笑う。


「ごめん、じゃないし。私、今日はもうこれ以上時間ないから」

野宮さんがそう言って先に自分だけ屈んだものだから、たすきで彼女と足首が結ばれていた村田さんがドスンと無様に尻餅をついた。

それを横目に見て鼻先で笑いながら、野宮さんが村田さんと結ばれている足首の紐を解く。


私の隣に立っていた持田さんが、尻餅をついた村田さんを見て吹き出すのを堪えているのがわかる。


「私もそろそろ行かないと」

そう言って、私の足首と一緒に結ばれていたたすきの紐を解く持田さんの肩は、笑いを堪えるように小刻みに震えていた。


「あーあ、紐で擦れて赤くなってる」

たすきを解いた野宮さんが、靴下をさげて足首をさする。

わざとらしくため息をつきながら立ち上がる野宮さんの横で、まだ床に尻餅をついたままの村田さんが申し訳なさそうにうつむいていた。