「食べてみる?」


ドキドキしながら、開封したチョコの箱から自分用にひとつ摘んで、残りを箱ごと星野くんに差し出してみる。

そうしたら、チョコをひとつ摘んだほうの手を星野くんにつかまれた。


「じゃぁ、1個ちょーだい」

私の手を口元に引き寄せた星野くんが、摘んだチョコをそのままパクリと食べる。

一瞬指ごと一緒に食べられてしまったような気がして、指先から身体中がカーッと一気に熱くなった。

た、食べられちゃった……

チョコがなくなった手は、まだ星野くんにつかまれたまま。それを茫然と見つめていたら、彼が口端に笑みを浮かべてそっと顔を近づけてくる。

私史上、一番に近い星野くんとの距離に、心臓が潰れそうなほどバクバク鳴り始めて、堪らず彼から顔を逸らす。

だけど私の手をつかむのとは反対の星野くんの手が、私の顎をつかんで彼との距離を近付けた。



一瞬前の私史上記録を大幅に更新するくらいの近距離で、私をとらえた星野くんの瞳が蠱惑的に揺れる。


「いい加減、逃がさねーよ」

低くささやく声が耳に届く。

次の瞬間、視界に落ちてきた陰と共に、彼の唇が重なった。





― Fin ―