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星野くんと一緒にいくつか机を向かい合わせにくっつけて、勉強を始める準備をして待っているけれど。
村田さんも、他のみんなもなかなか教室にやって来なかった。
「遅いねー」
今日は勉強中の糖分補給のために、みんなで分けようとチョコレートも持ってきていた。
それを机の上に出しながら、廊下を気にしてつぶやいていると、机を挟んで向かい側に座っていた星野くんが隣に来て座った。
「ど、どうしたの?」
急に近くなった距離に焦ったけれど、その行動に何の意味もなかったのか、星野くんは「別に」と笑うだけだ。
星野くんと付き合うことになってそろそろ二週間。
だけど、こんなふうに不意に距離が近くなると、心臓が壊れるんじゃないかと思うくらいドキドキする。
「そ、そういえばね。今度森ちゃんと会うことになったよ」
「へぇ、よかったな」
黙っていると心臓の音が聞こえてしまいそうで。とっさに思いついた話題を口にすると、星野くんが優しく目を細めた。
その眼差しが、ますます私の鼓動を速くする。
何かしていないと、それを静かに受け止められそうもなくて、私は机の上のチョコの箱をガサゴソと触った。