「それでは、新学期からどうぞよろしくお願いします」
どうやら、大人たちの話が終わったらしい。
お母さんがそう言って、校長先生に深々と頭を下げていた。
「はい。お待ちしております」
お母さんに穏やかな笑みを浮かべてそう言った校長先生が、ふと私に視線を移す。
弾かれたみたいに慌てて椅子から腰を上げると、校長先生が私に優しい眼差しを向けた。
「深谷 友さん、新学期にまた会うのを楽しみにしていますね」
『会うのを楽しみに』って言うけど、校長先生の顔を見るのなんて、始業式とか朝礼のときくらいでしょ。
普段の学校生活で会うときなんてないのに。
そんなことを思いながら、無言で小さく会釈した。