星野くんのシャツの背中をギュッとつかんでしまってから、自分の行動が恥ずかしくなる。
肩越しに振り向いた星野くんの目が僅かに見開かれたのに気がついて、慌ててシャツをつかむ手を開いた。
「ご、ごめん」
顔をそらして、無意識の行動を誤魔化すためにレモンティーを懸命に啜る。
「ごめんね。何でもないから、教室戻っていいよ」
横顔に星野くんの視線を感じる。
早口でそう言ったけど、彼はなかなか立ち去ろうとしなかった。
それどころか、開きかけたカーテンをぴったりと閉めてしまうと、壁に立て掛けてあったパイプ椅子を引っ張ってきて私のそばに座った。
「何でもなくないよな?もうしばらくいる」
強い口調で宣言した星野くんが、ちょっと不機嫌そうに私をジッと見てくるから焦る。
「な、何言ってるの?私はもう全然大丈夫だよ。なんなら、私のほうが先に教室戻ってもいいくらいだし」