◇
「開けていい?」
保健室のベッドに腰掛けていると、星野くんの声がして白いカーテンが静かに揺れた。
「あ、うん」
ぼんやりとしていた私は、足元でぐちゃぐちゃになっているブランケットを腰まで引っ張り上げると、慌てて体裁を整えた。
そこにいるのがわかっているのに、開いたカーテンの隙間から入ってきた星野くんにドキリとする。
ぎこちなく視線をそらすと、星野くんが不思議そうに首を傾げながらベッドのそばに立った。
「ん、これ」
星野くんが私にレモンティーの紙パックを差し出す。
驚いて顔を上げたら、星野くんが困ったように少し笑った。
「始業式だからそっちに出てるのか、保健の先生見つからなかった。少しは落ち着いた?」
私を置いて何処かに行ってしまったと思ったら、先生を探しに行くついでに飲み物を買ってきてくれたらしい。星野くんの気遣いが嬉しかった。